無駄な検査はひとつもありません
〜妊婦健診での諸検査について〜

妊婦健診の際に各種の検査をしますが、その検査項目はそれぞれの分娩施設の方針によって多少異なります。私は、妊婦さんとおなかの赤ちゃんの状態を診るということを一番大切に考えておりますし、なんらかの合併症が隠れていないかを見極めるということも妊婦健診の際の大切なポイントだと考えております。なぜならば、当クリニックは「安らかな良いお産と女性のためのプライマリーケアー」を基本方針としておりますので、重い合併症を抱えた妊婦さんは、その病態に適した大病院へ適切な時期に紹介することも大切な使命だと考えているからです。
そのために、当クリニックでは、下記(別表をご参照ください)のように諸検査を妊婦健診の節目で検査をしておりますので、結果として、妊娠中の各時期に多くの検査が必要になっているのが実情です。20年前であれば、しなかった検査も多数ありますが、医学の進歩や妊婦健診のよりいっそうの充実を求められる社会背景もあって、妊婦健診でチェックすべき項目が増えてきたのです。
それぞれがとても大切な検査ですし、不必要な余計な検査ということは決してありません。
ところが先日、「何の自覚症状もないのに、どうして心電図を検査するんですか。余計な検査なのではないですか。」というクレームをある妊婦さんからいただきました。説明が不足していたのであれば、お詫びしますが、決して無駄でも余計でもありません。実際、心電図をチェックしたことによって、本人が気のつかなかった心臓疾患が発見できて、適切に対応できたことが何度もあるのです。もちろん、たいていの健康な妊婦さんは、「心電図は異常なしですよ」と言われて、安心していただいています。
検査の内容についてお聞きになりたいことがあれば、妊婦健診の際に気軽にご質問してください。納得していただけるように、しっかりとご説明します。
当クリニックは、不当な利益追求のために、妊婦さんに不必要な検査を強要するようなことは断じていたしませんので、どうかご安心くださいますようお願い申し上げます。
                                                平成17年8月3日 記

<妊婦健診・諸検査一覧表>
超音波検査は毎回必ず施行します
@ 妊娠初期の初診時 子宮膣部細胞診(子宮癌の検査で、妊娠がきっかけで見つかることがあります)
検尿(尿蛋白、尿糖の検査で、腎臓病等の合併症が見つかります)。
A 母子手帳をいただくころ
  (妊娠8〜10週)
膣分泌物培養(おりものの検査で、炎症があると流産等の原因になります)
血液型と貧血検査(これは昔から必ずしていますね)
随時血糖(隠れた糖尿病が発見できます)
風疹HI抗体価(免疫がなければお産後にワクチン接種をします)。
B 初回妊婦健診(12週以降) 超音波骨密度測定(骨がもろい方でないかを調べます)
梅毒血清反応(梅毒の検査です)
HBs抗原(B型肝炎の検査です)
HCV抗体(C型肝炎の検査です)
HIV−1,2抗体価(エイズの検査です)
PT APTT(出血傾向を調べる検査で、血液疾患が見つかります)
生化学(肝機能を調べます)
C 妊娠中期(28週から29週) 心電図(自覚症状がなくても、隠れた虚血性心疾患や不整脈が時々見つかります。重篤な不整脈がみつかり、大病院へ転院して無事に分娩した方も時にいらっしゃいます)。
D 妊娠後期(30週から32週) 膣分泌物培養&クラミジアPCR(おりものの検査で、炎症があると前期破水や早産、新生児のクラミジア肺炎等の原因になります)
貧血検査(妊娠後半は貧血になりやすい時期です)
随時血糖(妊娠性糖尿病が妊娠後半に出る方もいます)
不規則抗体(急な輸血が必要な際にあらかじめ検査しておくとたいへん有利です)
HTLV-1(母乳を通して母から児へ感染するATLという白血病ですが、西日本に多くて新潟は少ないほうです)。
E 妊娠36週から ノンストレステストNST(赤ちゃんの心音検査です。赤ちゃんの元気な様子がわかるので、10ヶ月に入るとたびたび必要になります) NSTは、妊娠39週以降は、1週間に2回のペースで施行します。



                                                             以上