当クリニックの緊急時搬送先について

先日ある妊婦さんから「重症の場合や緊急の場合はどこへ紹介されるんですか?」と聞かれました。たいへんごもっともで重要なご質問だと思います。
私どもは、「安らかなよいお産と女性のためのプライマリーケア」を基本理念としておりますので、何らかの緊急を要する異常事態が発生すれば、躊躇せずその状態にふさわしい大病院へ紹介することも大切な使命だと考えております。

*緊急搬送が必要な状態とは

妊娠中:重症の切迫早産(未熟児が今にも産まれそうな状態)、妊娠高血圧症候群の重症(たとえば、急激な血圧上昇)、等々。
分娩中および分娩前後:妊娠高血圧症候群の重症化、分娩前後の大量出血、等々。
新生児:母体搬送の余裕もなく未熟児が出生してしまった場合や、成熟児でも呼吸循環状態が不良である場合、嘔吐・吐血、等々、NICU(新生児集中治療室)での検査・治療を要する状態。

*緊急搬送先は

PICU:新潟県内は、PICU(周産期医療センター)が3施設あります。新潟大学付属病院、新潟市民病院、長岡赤十字病院です。最重症の場合は、この3施設の中のどちらかへ搬送することになります。「新潟県周産期医療ネットワーク」という情報網が整備されており、当クリニックと3病院間でも緊密に連絡を取り合っています。
準PICU:さらに、周産期センターに準ずる病院として4施設あります。県立新発田病院、済生会新潟第二病院(新潟市西区寺地)、長岡中央綜合病院、県立中央病院(上越市)です。最重症でない場合や、新大等のPICU3病院がいずれも満床でどうにも困る場合等にお世話になることもあります。たとえば、妊娠28週の未熟児は、新大等のPICUでなければ無理ですが、32週の未熟児なら準PICUで治療していただくことも可能な場合があります。
新潟県は、他県に比しまだまだ恵まれている状況です。しかし、どこも満床のため搬送先に苦労することもないわけではありません。それでも、産科医・新生児科医の献身的な努力で受け入れていただくことがほとんどですので、ご心配はなさらないでください。


*付記:分娩施設までの距離について


一般に、分娩施設までの時間的距離は1時間以内であれば可能です。特に30分以内であれば、「近いから問題ない。」と表現できる距離です。
当クリニックでお産される皆さんは、かなり広範囲です。三条市内の方が多いのは当然かもしれませんが、北は、旧白根地区や加茂市は勿論のこと、田上町の方もいらしています。南は、見附市の方も多数お産なさっていますし、北長岡の方もいらっしゃいます。西は、燕市、旧吉田町、旧分水町、弥彦村、旧巻町の方もいらしています。
逆に、当クリニックをご希望なさってもご自宅から90分以上かかるような方は、状況をご説明して、お近くの分娩施設を紹介することもあります。
県央地区にはPICU周産期医療センターはありませんが、1時間以内に行ける分娩施設が5〜6箇所はあるものと思います。どこの分娩施設でどういうお産をしたいかはとても大切なことです。ポイントは、合併症や異常所見がないか、その分娩施設の方針と自分の希望がマッチしているか、時間的距離はどうか、といったことです。
どうぞ、上記のことをご参考にしていただき、より良い選択をしていただきたいと願っております。


平成20年(2008)1月30日:記