産科医不足は「教育」に原因

 産科医不足が言われ始めて久しく、その原因について多く議論されてきた。勤務が過酷、訴訟が多いなど…。対策も産科補償制度、妊婦健診や分娩への公費補助の増額、産科医の待遇改善などあれこれ立てられ始めた。

 さらには医学部の定員増や医師の診療科目別の定員を策定しよう、という議論もある。しかし、おそらく無駄に終わるだろう。なぜなら今の医学生に「世のため人のため」「自分がやらねば誰がやる」といった公に奉仕する精神が乏しいのが真の原因だからだ。要するに、産科など勤務のきつい診療科目が敬遠されているのだ。

 産科は人生の始まりを担当する重要診療科であり、母性保護は国民の健康福祉の根幹である。このことに誇りを持ち、自ら進んで産科医を目指す若者が減っているのである。

 つまり、産科医不足の本当の原因は教育の荒廃であり、国民の規範意識の退歩にあるのだ。よって医学部の定員を増やしたり、定員策定で無理に産科医にさせても、よい産科医の増加にはつながらないだろう。

平成20年11月2日 産経新聞のコラムに院長の一文掲載